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 英語も出来ないのにフランス語?メルシーとボンジュールとボンソワールしか知らないのに、無謀にもと言おうかほんと今思えば、我ながら呆れるばかり。それもこれもやはり大学受験の失敗が大きいし、それに輪をかけての失恋。ぼくはどこにも行き場がなく、えいやっ!と新しい世界に向けて旅立つことにしたのです。表題の「愛は時を忘れさせ、時は愛を忘れさせる」は評論家・加藤周一著の『続 羊の歌』の中で、ニースの料亭の壁あったプロバンス語の諺です。僕は浪人時代にこの本を読んでいて、つらい失恋の想いを断ち切れるのなら、加藤周一が旅したフランスやイタリアを放浪してみたいと思うようになっていた。
 カミュの『異邦人』がマルチェロ・マストロヤンニ主演で映画化されたのもこのころです。60年代の日本は、今のようなアメリカ一辺倒じゃなくサルトルやボーボアール、カミュなどフランス文化が、フランス映画やシャンソンもどんどん入ってきた時代でした。
 そんなこんなで万博が終わる9月頃にはフランス・パリへ行くことにし、神戸のフランス領事館にパリにあるアリアンスフランセーズという語学学校での入学方法とかの質問を手紙に書いたり、パスポートの申請をしたり旅行代理店に行ってヨーロッパまで安く行ける方法を尋ねたりして、あわただしい日々を過ごしていた。